「日本企業が欲しがる」、「グローバル人材」、「必須スキル」、刺激的なキーワードの三連続がタイtルになってますね!
しかも、著者は語学学校の老舗ベルリッツのCEOで、前職は日本IBMでは初の女性取締役を歴任というキャリアの持ち主。本文は、日本語だけでなく、ところどころに英文が入るため、最初から最後まで「横組み」です。
しかし、この本は英語の勉強法を説いた本ではありません。グローバル時代に不可欠なマインドセットと世界標準の仕事のやり方について書かれた内容です。
ビジネスパーソンにとって必要なことは英語学習が目的ではなく、あくまでも英語をつかってビジネス・コミュニケーションを行うことによって、成果を出すことにあるのです。
しかも、英語じたいも、話し手がネイティブよりもノン・ネイティブが比率的には3:7と圧倒的になった時代、アメリカや英国をモデルにした英語学習は、時代の流れにはまったく合っていないのです。
もちろん英語も重要ですが、大事なことはあくまでも「個」をベースに考えるということ。たとえ会社や組織に属していても「個」をベースに考え、ネットワークも「個」を中心につくるのが当たり前となってきたのです。これが世界標準というべきでしょう。
そんな時代のパーソナル・ネットワーク構築には、豊富な「引き出し」が必要だという著者の発言には、おおいに我が意を得たりと思ったものです。
グローバルビジネスでは、パーソナル・ネットワークが重要になると書きました。パーソナル・ネットワークとは組織のポジション(肩書きや役職)に頼らない人間関係のことですから、ビジネス以外の引き出しをどれだけ豊富にもっているかも問われるわけです(P.85)。
拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012)を執筆していた時点では、本書の存在を知らなかったのが残念です。もし読んでいれば、「グローバル人材」養成という要素も「引き出し」を増やさなければならない理由の一つとして強調できたのではないかと思いました。基本的に、拙著に引用した藤田田(ふじた・でん)の発言と同じ趣旨を述べてますね。 ⇒ http://www.kou-shobo.co.jp/files/sample/1074.pdf 参照
つねに「なぜ?」という疑問をもち自問自答し、臆せず質問し、ロジカルに筋道たてて考えて発言をするという生活習慣をもつこと、これがグローバル社会のなかで生き抜くために絶対不可欠な「自分のアタマで考え抜くチカラ」をつくります。これはわたしがに書いたことと基本的に同じです。
著者は、男社会が優勢であるビジネス社会のなかで、日本IBMで女性初の取締役に就任した人ですが、その人がマイノリティであることのデメリットだけでなくメリットについて語っていることは、おおいに感銘を受けました。グローバル社会のなかでは、男性であっても日本人はあくまでもマイノリティなのですから。
海外勤務であろうがなかろうが、こういうマインドセットをもって生きていくことが、これからの時代のビジネスパーソンには不可欠なのです。
ぜひお読みいただきたい一冊として推奨いたします。
目 次
はじめに
プロローグ 「変わる」ことを恐れているヒマはない!
勝てるのは「カタストロフィック・ジャンプ」を起こした者だけ
悔しい経験が「大転換」を生んだ
自分次第でチャンスはいくらでもある時代
第1章 民族大移動-「あうんの呼吸」が通用しない!
「帰らざる橋」を渡りはじめた日本企業
M&A事業を担えるPMIリーダーを求む
TOEICのハイスコアよりマインドセットが大事
BOPビジネスにグローバル化のカギあり
欲しい人材は「世界に通用する経営者」だけ
外国人社員と対等に競える力を磨け
現場レベルで判断できるリーダー求む
海外への武者修行が奇抜な製品を生んだ
「家族以外はすべて変えよう」
第2章 内永流・世界と渡り合う人材になるための6つの条件
アクションが決まれば、あとはツールを磨くだけ
①「論理力」―「英語」を超える世界最強ツール
②ゼロベース・コミュニケーション-脱「あうんの呼吸」
③「違い」を理解する力
④「そこそこ」の英語力
⑤「自分」を語る力
⑥名刺なしで付き合える人脈
第3章 どこでも使える人材になるために
沈黙は「金」ではなく「禁」!?
ハイコンテクストvs.ローコンテクスト
「自分」を知ることが第一歩
「通じない」のが当たり前
「グッド・オールド・ボーイズ・ネットワーク」は過去の遺物
第4章「国際試合」の基本ルールを学ぼう
正しいトレーニングを選ぶ
3秒ルール
No bad question!
Be assertive!
エレベーターピッチ
Simple is the best!
DOs & DON'Tsリスト
「日常会話」をあなどるべからず
第5章 これが「使える」英語だ!-内永流・実践テクニック
明日から即使える、シチュエーション別ビジネス英語
会議を進行する-ファシリテーターに指名されても怖くない!
会議に参加する-アクティブ・コミュニケーターを目指そう
電話会議に出席する-苦手意識はこう克服するべし!
プレゼンテーションをする-ビジュアル・コミュニケーションのコツも学ぼう
交渉をする-いかに有利な条件を引き出すか
第6章 ブレない「個」を作る「強く」「早く」決断した者だけが生き残る
震災で外国人教師が
いっせいに帰国してしまった
揺らがない「軸」が決断を支える
「古典」と向き合うことから生まれる力
一風変わったセミナー
古典にグローバルリーダーのあり方を見る
長期的なロードマップを描く
グローバルチームの一員として生きる
エピローグ 「Execution」あるのみ!
4割でいいからやってみよう
行動に移してわかることがある
付録 APPENDIX
世界中どこにいても会話が弾む11のコツ
会議で扱いにくい参加者のタイプと、その対処法
電話会議(テレカンファレンス)のDOs&DON'Tsリスト
会議で必ず役立つキー・フレーズ
ファシリテーション(進行)に絶対役立つキーフレーズ
プレゼンテーションで必ず役立つキーフレーズ
ネゴシエーション(交渉)で必ず役立つキーフレーズ
POWER WORDS
ブレない軸を作る「古典」リスト
著者プロフィール
内永ゆか子(うちなが・ゆかこ)
ベルリッツコーポレーションCEO(最高経営責任者)、株式会社ベネッセホールディングス取締役副社長を兼務。1946年生まれ。1971年東京大学理学部物理学科卒業、同年日本IBMに入社。長年ソフトウエア開発にたずさわり、1995年に同社で初の女性取締役に就任。2008年4月より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
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