『督促OL修行日記』(榎本まみ、文春文庫、2015)という本が面白いので「一気読み」してしまいました。
この本でいう「督促」とは、債権回収のために、支払い延滞客に電話でする督促のことです。就職氷河期にやっと決まった信販会社で、新卒として最初に配属されたのが督促コールセンター。「花のOL」とはほど遠い世界ですが、会社組織ですから新人に配属先は選べません。
電話による督促は、対面ではなく、声だけがたよりのコミュニケーション。督促したからといって、そうすんなりと払ってくれるわけではないので、おおいに苦労するわけです。この本には、著者が体験した多種多様な事例がでてきますが、多重債務者や支払困難な顧客からは罵詈雑言をあびせられ、ほとんどクレーマーのような内容もきわめて多い世界であることがわかります。
この本の著者は、もともと気弱で、苦労もハンパではなかったようです。ですが、なんとかその世界でサバイバルできただけでなく、年間2,000億円の債権回収も可能にしたとのこと。そのノウハウとはいったいどんなものなのか? そのディテールが、具体的に書かれています。
仕事をつうじて成長するフツーの女性の物語であり、苦痛と思える仕事も、どうやったらそのなかでサバイバルできるかという仕事術にもなっています。クレーム対応の本でもあり、コミュニケーション下手で苦労している人にとっての実践的アドバイスが「督促OLのコミュ・テク!」としてまとめられています。
ビジネス書として売り出しているわけではないのに、つまらないビジネス書より、はるかに面白い! テレビドラマ化したら面白いのでは?
目 次
01 ここは強制収容所?
02 "ブラック部署” の紅一点!
督促OLのコミュ・テク! その1 約束日時は相手に言わせる
03 ストーカー疑惑と襲撃予告
督促OLのコミュ・テク! その2 「おカネ返して!」と言わずにおカネを回収するテクニック
04 謎の奇病に襲われる…
督促OLのコミュ・テク! その3 いきなり怒鳴られた時に相手に反撃する方法
05 自分の身は自分で守る
督促OLのコミュ・テク! その4 厳しいことを言う時のツンデレ・クロージング
06 N本、大抜擢される
07 自尊心を埋める
督促OLのコミュ・テク! その5 クレームには付箋モードで反撃
08 濃すぎる人間修行
督促OLのコミュ・テク! その6 「謝ればいいと思ってんだろ!」と言われない謝り方
09 センパイ武勇伝
督促OLのコミュ・テク! その7 「ごめんなさい」と「ありがとうございます」の黄金比
10 合コンサバイバル
督促OLのコミュ・テク! その8 声だけ美人になる方法
11 仕事からもらった武器と盾
おわりに
文庫版あとがき
参考書籍リスト
解説 佐藤優
著者プロフィール
榎本まみ(えのもと・まみ)
新卒で信販会社に入社し支払延滞顧客への督促を行うコールセンターに配属される。クレジットカードの回収部門にて300人のオペレーターを指示し、年間2000億円の債権を回収。現在も某金融機関のコールセンターで働く傍ら、電話オペレーターの地位向上のため活動している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。
督促(トクソク)OLの回収4コマブログ (著者のブログ)
・・「コールセンターで働くOLのブログ。世の中に「督促」という言葉が広まればいいなぁと活動中。 エッセイ『督促OL 修行日記』(榎本まみ/文藝春秋)。コールセンター専門誌・コンピューターテレフォニ―にて4コマ漫画連載中です」
<ブログ内関連記事>
書評 『「怒るお客様」こそ、神様です!-クレーム客をお得意様に変える30の方法-』(谷 厚志、徳間書店、2011)-「対話をつうじた問題発見」こそ、クレーム対応の要
書評 『仕事漂流-就職氷河期世代の「働き方」-』(稲泉 連、文春文庫、2013 初版単行本 2010)-「キャリア構築は自分で行うという価値観」への転換期の若者たちを描いた中身の濃いノンフィクション
書評 『修羅場が人を磨く』(桜井章一、宝島社新書、2011)-修羅場を切り抜けるには、五感を研ぎ澄ませ!
(2012年7月3日発売の拙著です)
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