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2018年2月14日水曜日

「冬季限定」という売り方はロングセラーの条件!?-ロッテの洋酒入りチョコレート


洋酒入りのチョコレートは「冬季限定」の楽しみだ。定番はラムレーズン入りの「ラミー」(Rummy)。これが大好き。もう食べ始めて何年になることか。

こないだ初めて店頭でみたのが黄色のパッケージのカルヴァドス入り。カルヴァドスは、リンゴのブランデー。味はまあ、ブランデーですね、ちょっと甘めだが・・・。

それにしても「冬季限定」という売り方はうまいねえといつも感心する。冬が始まる前に店頭に出現し、冬が終わると店頭から消える。このパッケージを店頭で見ると「買わなきゃ!」という気持ちにさせられるからね。

毎年、毎年おなじことの繰り返しとはいえ、これがロングセラー商品の秘密かも。

子どもの頃、ウイスキーボンボンが「禁断のお菓子」(?)だった。そういう記憶をもっているからかもしれないが、洋酒入りチョコが好きだ。






<ブログ内関連記事>

書評 『ターゲット-ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか?-』(ジェローム・シュシャン、高橋書店、2016)-日本との出会い、弓道からの学びをビジネスに活かしてきたフランス人社長が語る

バレンタイン・デーに本の贈り物 『大正十五年のバレンタイン-日本でチョコレートをつくった V.F.モロゾフ物語-』(川又一英、PHP、1984)

書評 『ゲームのルールを変えろ-ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営-』(高岡浩三、ダイヤモンド社、2013)-スイスを代表するグローバル企業ネスレを日本法人という「窓」から見た骨太の経営書




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2014年6月3日火曜日

書評 『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか-爆発的な成長を遂げた驚異の逆張り戦略-』(ヴォルフガング・ヒュアヴェーガー、長谷川圭訳、日経BP社、2013)-タイの 「ローカル製品」 を 「グローバルブランド」に育て上げたストーリー


「レッドブル」は日本でもすっかり有名になったエナジードリンクですね。本書はそのレッドブルが世界商品に成長した過程を描いたビジネスノンフィクションです。

どれだけの人が気がついているか知りませんが、じつはレッドブルを販売しているのはオーストリア企業です。オーストラリアではなくオーストリア。豪州ではなく欧州。

しかもモーツァルトの生まれ故郷ザルツブルクの近くに本社を置いています。

エナジードリンクとモーツァルトはフツーはぜんぜん結びつきませんが、なぜオーストリアでしかもザルツブルクなのか? それはレッドブルを「世界商品」に成長させ、「世界ブランド」にしたのがこの近くで生まれ育ったオーストリア人だからです。

しかもその創業経営者はクロアチア系オーストリア人のマーケッター。クロアチア系というのは、クロアチアがハプスブルク帝国の一部であった時代の名残ですね。

マスコミ嫌いで、プライベートライフを大事にする姿勢を貫いているためほとんど露出がありません。本書もまたインタビュー取材ができなかったので、すでに雑誌などのマスコミに発表されている記事をもとに、関係者を取材して本にしたものです。ですからちょっと物足りない感じがなくもありませんが・・。


■ビジネスのヒントは日本から、製品はタイのローカル商品から

創業経営者のマテシッツ氏は、もともとは英蘭系の食品コングリマリットのユニリバーでマーケッターとして成功したビジネスマン。英語には堪能だということです。戦後タイプの欧州人なのでしょう。

自分でビジネスをやりたいと考えていたときに出会った雑誌記事の長者番付で、日本の大正製薬のことを知ります。日本では圧倒的に有名なリポビタンDというスタミナドリンクで財産を築いたということが強く印象に残ったようです。

そんなときユニリバーのフランチャイザーであった華人系タイ企業で出会ったのがレッドブル。そうです、レッドブルはもともとタイのスタミナドリンクなのです。

このブログでもすでに書いてますが、タイの「ローカル製品から、「グローバル製品」として脱皮させたのはタイ人ではなく、なんとオーストリア人の企業家だったのです。

(これがタイの「レッドブル」=「クラティンデーン」 筆者撮影)

日本で缶入りの「レッドブル」を飲んだことのある人なら、タイで「レッドブル」(=クラティンデーン:赤い牛)を飲むと、日本で売っている缶入りのレッドブルは、すでに別物になっていることに気がつくはずです。成分を改良し、味も洗練された普遍的(=ユニバーサル)なものに改造されているからです。

(Made in Austria の文字に注目! 筆者撮影)

これは「ローカル製品のグローバル化」と言えるでしょう。分野は違いますが、武道としての柔道が日本人によってではなく、主に欧州人によって Judo として全世界に普及していったプロセスと似ているかもしれません。

タイのレッドブルに惚れ込んだ創業経営者のマテシッツ氏は、タイのユーウィッタヤー家からレッドブルのアジア地域外での販売ライセンスを取得し、合弁でレッドブル・マーケティング社を設立。これはちょうどいまから30年前の1984年のことだったようです。

タイとの合弁は、創業経営者が49%でタイ側が51%(・・会社が49%で個人が2%)のようですが、本社はオーストリアで登記しているようなので、タイの法律に従ったわけではなさそうです。

タイ側としてはレッドブルの世界的成功は評価しており、とくにクチを出さないのだとか。タイ側のパートナーはすでに死去して息子が事業承継してますが、とくに問題は起こってないようです。創業経営者のマテシッツ氏のたぐいまれなる手腕に満足しているということでしょう。

ただし、タイ側パートナーの孫が引き起こした事件は、タイでは大きなスキャンダルになってましたが・・・


■地元オーストリアにこだわる姿勢

オーストリア企業で世界ブランドといえば、本書でも触れられていますが、日本でも有名なクリスタル製品のスワロフスキーくらいしか思いつきません。

そのオーストリアで、この四半世紀で急成長したのがレッドブル。じつはわたしもレッドブルがオーストリア企業だということには長く気がついてませんでした。オーヅトリアはドイツ語圏ですが、ドイツやスイスと比べると、あまりビジネスという点では話題になることがないからでもあります。

オーストリア企業であるという以外のきわだった特徴はそれだけではありません。

創業経営者がマスコミへの露出を嫌っているだけでなく、非上場に徹し、しかも無借金経営。本体はマーケティングとブランド・マネジメントに特化して、製造部門はもたずに完全に地元メーカーにアウトーソシング。ファブレスというビジネスモデルといってもいいでしょう。

税金の高いオーストリアで納税し、地元で雇用をつくりだし、地域経済を重視する姿勢は、グローバル企業に大成長した現在でもかたくなに変えることはないようです。郷土愛、地域愛が根底にあるのでしょう。

(ドイツ語版のカバーは創業経営者と本社ビル)

マーケティングとブランド・マネジメントに特化していても、広告宣伝は代理店まかせにせず、事業としてのスポーツビジネスとスポーツマーケティングをつうじてシナジー効果を狙うという姿勢。

そもそも創業経営者自身が大のモータースポーツ好きであるだけでなく、スポーツのもつ特性がエナジードリンクの商品特性にフィットし、ブランド育成に多大な効果をもっていることをマーケッターとして熟知しているからなのでしょう。

マーケティングとブランド・マネジメントに特化するという姿勢は、スイスのグローバル企業ネスレにも共通するものがありますね。

そもそもマーケティング(marketing)もブランドマネジメントも英語圏のアメリカで発展したものですが、欧州では伝統的に重視されてきたブランドを中核に置くという姿勢とあいまって、レッドブルというブランドとして花開いたのでありましょう。

あらたにブランドを立ち上げて成長させるのは、そう簡単なことではありません。しかし、レッドブルのケースにおいては、元ネタも発想も自分で考え出したものではありませんし、先進国や地元から生まれたものでもありません。

本書では強調されてませんが、わたしとしては、レッドブルはタイで生まれたスタミナドリンクであり、それを世界ブランドに育て上げたのがオーストリア企業であることに、日本企業はもっと注目してほしいと思います。

それはローカル商品をグローバル化し、しかも新規進出先ではローカルマーケットにあわせてローカライズするという循環。そのエッセンスには学ぶべきものが多いといっていいと思います。





目 次

序章 レッドブルとは何者か?
PARTⅠ  52億本への道

第1章 市場を創造する
 きっかけは日本のリポビタンD
 タイのエナジードリンクにほれ込む
 オーストリアに本拠を置く
 同級生と斬新なCMをつくる
 ハンガリーから世界への第一歩
 ライバルたちはまだ甘く見ていた
第2章 世界市場を制圧せよ
 レッドブル、アメリカへ
 世界の頂上に行く道
 レッドブル・コーラの失敗
 ミスが許されるのは一度だけ 
 まるで宗教?
第3章 「販売禁止」を逆手に取る
 飲みすぎると死亡する?
 砂糖たっぷりのエスプレッソ
 医者は警告する
第4章 男と男の握手に価値がある 
 契約書はいらない
 欧州生産にこだわる
 頭の痛いデポジット制に秘策で対応
 商標が命
第5章 銀行にだけは借金するな
 姿を現さない株主
 飲料ではなくエキサイティングな体験を売る
 儲けた金だけを投資する
第6章 すべてがマーケティングだ
 オリジナルだからこそ価値がある
 ポストモダンの"聖水"
 代理店に丸投げせずイベントを自社開催
第7章スポーツの一部になる
 アスリートは「家族」
 「新しいスポーツ」を育成する
 黄金の三分率
 スポーツを一方的に利用しない/ドーピング医師を雇う
PART II スポーツ・マーケティング

第8章 ファンに抵抗されてもサッカークラブを買収
 「伝統を破壊した」と抗議される
 監督のクビ切り問題
 トレーニング施設には金をかける
 ニューヨーク・レッドブルズ
 ドイツ・ブンデスリーガ参戦
 ブラジルとガーナに育成施設をつくる
第9章  F1王者になる
 ジャガーを飲み込んだブル
 スクーデリア・トロ・ロッソ
 ベッテルの快進撃
 ミスコンテスト?
 オーストリアのサーキットの復活
 ナスカー参入の失敗
 ラリーとオートバイにも進出
 若手ドライバーの育成
第10章 氷の上のブル
 レッドブル・ザルツブルグ
 ヨーロッパ制覇へ
 NHLチーム買収の失敗
第11章 メディア嫌いによるメディアへの進出
 取材対応の"アメとムチ"
 レッドブルの先進的なデジタルTV
 ローカル放送局の買収
 遅れに遅れたTV放送のリニューアル
 レッドブルの出版社
 オーストリアの生活雑誌
第12章 グルメ・ブランドの創設
 由緒正しい飲み物
 最高級フィンガーフード
 アフリカンテイストなカフェ
PART III  レッドブル帝国の正体

第13章 叩き上げの億万長者
 計算しづらい資産
 レッドブルグループの構成
第14章 オーストリアに喜んで税金を払う
 豊かな自然の中にある本社
 イベント開催スペースも自前
 飛行機のコレクション
 レッドブル・エアレース
 絶好調のF1
 世界各地でサッカーに参入
 メディア企業の買収
 自社内に広告代理店をつくる
 アフロカフェ
第15章 レッドブルのもう一つの顔
 マテシッツ個人のビジネス
 レストランの運営
 不動産ビジネス
 フェルテンドルフの飛行場
 建設会社のブル・バウ
 地域暖房ネットワーク
 すべてが成功プロジェクトではない
PART IV 創業者の横顔

第16章 創業者マテシッツの華麗なる人脈
 F1貴族の仲間たち
 サッカー界の「皇帝」
 政治家のつながり
 レッドブルを彩るアーティスト
 グルメ仲間たち
 マテシッツの右腕は誰?
第17章 ブルと呼ばれる男
 華やかなウィーンの街で学ぶ
 ブルの息子
 型破りだけど保守的な性格
 空飛ぶスポーツマン
 女性関係は派手だが…
 慈善家としての一面
終章 ブルのこれから


<関連サイト>

レッドブル・ジャパン 公式サイト

wikipedia の項目「レッドブル」には、「世界商品」としての開発事情についての解説がある

オーストリアに学ぶ「地方・中小企業主義」-「都会で大企業勤務」以外に広がる選択肢!(東洋経済新報オンライン、2014年12月8日)


<ブログ内関連記事>

「レッドブル」-タイが本家本元の 「ローカル製品」 が 「グローバル製品」 として生まれ変わった!
・・現在でもタイ側は51%を所有するパートナー

タイのあれこれ (26) タイ好きなら絶対に必携のサブカル写真集 Very Thai
・・タイ人が好きなスタミナドリンクという飲料カテゴリーについても一章とりあげられている。ちなみに、朝鮮人参のふるさとである韓国でもスタミナドリンク人気は高いのだが、本書には韓国の事情がまったく出てこないのが不思議


■ローカリゼーション

書評 『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか-世界で売れる商品の異文化対応力-』(安西洋之、中林鉄太郎、日経BP社、2011)-日本製品とサービスを海外市場で売るために必要な考え方とは?
・・「ローカリゼーション」にかんする必読書

由紀さおり世界デビューをどう捉えるか?-「偶然」を活かしきった「意図せざる海外進出」の事例として・・日本語と音楽の関係について

プラクティカルな観点から日本語に敏感になる-藤田田(ふじた・でん)の「マクド」・「ナルド」を見よ!

ディズニーの新作アニメ映画 『アナと雪の女王』(2013)の「日本語吹き替え版」は「製品ローカリゼーション」の鑑(かがみ)!

書評 『ゲームのルールを変えろ-ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営-』(高岡浩三、ダイヤモンド社、2013)-スイスを代表するグローバル企業ネスレを日本法人という「窓」から見た骨太の経営書


■スポーツ

「近代スポーツ」からみた英国と英連邦-スポーツを広い文脈のなかで捉えてみよう!


■オーストリア

書評 『知の巨人ドラッカー自伝』(ピーター・F.ドラッカー、牧野 洋訳・解説、日経ビジネス人文庫、2009 単行本初版 2005)-ドラッカー自身による「メイキング・オブ・知の巨人ドラッカー」
・・オーストリア出身でアメリカに移民して成功した有名人はドラッカーとアーノルド・シュワルツネガーの二人

書評 『向う岸からの世界史-一つの四八年革命史論-』(良知力、ちくま学芸文庫、1993 単行本初版 1978)-「社会史」研究における記念碑的名著
・・「ウィーンはゲルマン民族とスラヴ民族の接点という、地政学的な特徴をもった都市なのである。ゲルマン民族を頂点にいただきながら、ゲルマン民族とスラヴ民族が中層から下層をなす重層構造をもった都市である。これは現在のオーストリアでも変わらない」

(2014年8月21日 情報追加)




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2014年6月2日月曜日

書評 『ゲームのルールを変えろ-ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営-』(高岡浩三、ダイヤモンド社、2013)-スイスを代表するグローバル企業ネスレを日本法人という「窓」から見た骨太の経営書


グローバル企業ネスレ日本法人で、初の生え抜きCEOとなった著者の第二弾。

前著 『逆算力-成功したけりゃ人生の〆切を決めろ-』(高岡浩三、おち まさと=プロデュース、日経BP社、2013) がみずからの死生観=人生観を語った、かなりパーソナルな内容であったのに対し、本書は実際のネスレ日本のビジネスと経営に即して持論を展開した本格的なビジネス書です。かなり内容豊富で、しかも濃いといっていいでしょう。

帯には、「思いついたことの98パーセントは実行せよ!」などのキャッチコピーが書かれていますが、それだけなら並のビジネス書と同じで、あえて読むまでのこともないという気にさせられます。

本書が類書と異なるのは、きわめて日本的な教育を受けてきた著者であるにもかかわらず、グローバル企業のなかでもまれることによって培われた、実践をつうじた本質的な思考が展開されていることにあります。

現役の経営者が書いた経営書だけに、テーマは経営全般にわたりますが、ネスレというグローバル企業が、マーケティングとブランド・マネジメントをビジネスの根幹に据えた会社であり、すべてはそこに集約されることを説得力ある筆致で描いていることにあるでしょう。

著者は、ネスレはブランドを以下の三段階でマネジメントしていると書いています。

① コーポレート・ブランド(=企業ブランド)
② カテゴリー・ブランド
③ プロダクト・ブランド(=製品ブランド)

カテゴリーブランドとは、ネスカフェやキットカットといった製品群ごとに束ねたものであり、その傘下に製品ブランドが含まれるわけですが、BEM( Business Executive Manager)として、ブランド全般について損益責任をもって経営する体制になっているとのこと。

このため、ネスカフェやキットカットは消費者に知られていても、ネスレという企業ブランドと結びついていないといった問題もあるようです。しかし、著者が言うように、直接カネを生み出すのはカテゴリーブランドと製品ブランドであって、企業ブランド強化にチカラを入れすぎても意味はないのです。日本企業のブランドマネジメントに対する痛烈な批判rと受け取るべきでしょう。

このように著者の思考は合理的でロジカルですが、次のローカリゼーションにかんする発言もまた、かなり本質をついたものです。

日本人は、これまで受けてきた教育のせいで、グローバルな視点を日本風にローカライズ(地域化)する能力に欠けている。本質的な部分を論理的に把握できないため、日本独自の戦略やアイデアが生まれてこないのだ。(P.58)

著者は、この点を本書全体をつかって具体的に述べた本だと言ってもいいかもしれません。

日本人として、日本市場というローカルマーケットを熟知したうえで、グローバル企業のロジックをローカルで展開するとはどういうことか、グローバル全体のなかでローカルマーケットを経営するとはどういうことかを考え抜いているからこそ生まれてきた考えでしょう。

著者の立ち位置は、グローバル展開を考えている日本企業の大半とは真逆のものですが、海外進出先という海外のローカルマーケットで、いかに日本本社のロジックを普遍的なレベルまで高めたうえで、ローカルに即して経営していくかについてヒントを得ることができるかもしれません。

もしかしたら、日本企業に比べて、ネスレは特殊な感覚を持っているかもしれない。クライシスが起こって当たり前というなかでマーケットヘッドに求められるのは、クライシス(危機)をいかにしてオポチュニティ(機会)に変えるかということになる。・・(中略)・・ つまり「Crisis is Opportunity.」なのだ。このことは、スイス本社から常に言われてきた。私が入社した30年前から聞かされていたので、ネスレとして筋金入りのカルチャーなのである。(P.254)

国内市場が小さくて、たとえ危険な地域であろうと海外市場を開拓していかなければ生き残れないというスイスの制約条件から生まれたネスレもまた、濃厚なスイス的を持ち合わせているということでしょう。

一方で、ネスレ日本法人は、日本の国内市場でしかビジネスを行うことは許されていないという絶対的な「制約条件」があるからこそ、縮小する市場のなかでもビジネスチャンスを発見し、徹底的にマーケットを深掘りし、成功を収めてきたわけです。

つねに変化しつづける市場環境、消費者意識、そして従業員意識。みずからの成功体験すら、環境変化のなかでは否定していかなくては、絶対的な「制約条件」のもとでは生き残っていけないのです。

経営トップの仕事とは、ゲームのルールを変えることにある、変革こそが経営者のやりがいであるといいう著者の姿勢はまさにそのとおりです。そうでなければ、本社にとってもローカルの経営トップ交代の意味はありません。

経営者あるいは経営者になりたい人、欧州系グローバル企業の日本法人とはどういうものか知りたい人だけでなく、ネスレという欧州系のグローバル会社について、日本法人という「窓」から覗いてみることのできる内容にもなっています。

「Think Globally, Act Locally」(グローバルに思考し、ローカルに行動する)を地でいった、実践と思考に基づいた本。読み応えのある本書は、ぜひ読んでいただきたいと思います。





目 次

序章 史上初、生え抜き日本人社長に就任
 ●グローバル人材の条件は「祖国を捨てること」
 ●史上初の生え抜き日本人社長に就任
 ●副社長就任も異例の人事だった
 ●変革こそが、経営者のやりがい
第1章 マーケティングは経営そのものである-戦後モデルの終焉で求められるプロの経営-
 ●日本以上に日本的経営の外資系企業
 ●過去の成功体験より未来を語る
 ●国家と企業が抱える問題の共通点
 ●旧来の成長モデルに縛られてはいけない
 ●脱却のカギは「プロの経営者」を育てること
 ●マーケティングは経営そのものである
 ●プロの経営者に必要なリーダーシップとは
 ●ゲームのルールを変えて、道を拓く
 ●ニッポン株式会社のルールを変えるのは人事から
 ●基本戦略をローカライズしているか
第2章 売れない商品を売ってこそ一人前-現場が教えてくれたイノベーションの真髄-
 ●42歳で他界した父と祖父
 ●嫌なことは、自分で変えなさい 試練を迎えた大学受験
 ●実力で評価される企業を選択
 ●外資系企業ネスレは日本的経営だった
 ●売れない商品を売ってこそ一人前
 ●思いついたことの98パーセントは実行する
 ●試験合格で得た本社への切符
第3章 撤退という決断を下すとき-ネスレに受け継がれる、他社を思いやる経営-
 ●過酷なアメリカ生活のスタート
 ●「Silent is Stupid」
 ●日本に粉ミルクを導入せよ
 ●撤退という決断は辛くても、正しかった
第4章 批評の前に自分のアイデアを実行せよ-「キットカット」で実践した「Think Globally, Act Locally.」-
 ●日本人にとってのキットカット・ブレイクとは何か
 ●九州支店の1本の電話から始まった
 ●全国の受験生の不安に寄り添うプロジェクト
 ●受験生のお守りとなった「キットカット」
 ●「キットカット」は主役にならなくていい
 ●ブランドは広告ではなくニュースで作られる
 ●「ありがとう」と言ってもらえるブランドを目指す
 ●批評する前にまずは実行せよ
第5章 ゲームのルールを変えろ-変革を起こすリーダーに必要なこと-
 ●人口減少のなかでも必ずチャンスはある
 ●システムで飲ませる新モデルを構築
 ●「価値共創」で揺るぎないモデルへ
 ●直属で招集した50人のプロジェクトメンバー
 ●強力なトップダウンでゲームのルールを変える
 ●変革には最悪のケースを想定した準備が必要
 ●あらゆる最終責任はリーダーが負う
 ●間接部門もゲームのルールを変えられる
第6章 採用・育成・評価で会社は決まる-ストーリーを共有、ただしコンセンサスは必要ない-
 ●イノベーションを起こす人材を集めるために
 ●究極のトレーニングによる人材育成
 ●社員の能力は人事次第で開花する
 ●労働組合もコンサルタントになる
 ●残業が減らないネックは管理職にあった
 ●変革にコンセンサスは必要ない
第7章 危機のあるところに機会がある-義務を糧に遂げる成長-
 ●変わりつつあるネスレのブランド戦略
 ●マーケティング発想のブランド戦略へ
 ●東日本大震災で発揮されたリスクマネジメント
 ●世界規模の危機に学んだBCP
 ●危機のあるところに機会がある
 ●これからの企業が負うべき責任と義務
 ●利益を上げることに堂々と胸を張れ
終章 本物のリーダーはリーダーをつくる
 ●仕組みで育てるリーダーシップ
 ●次世代リーダーへの期待
あとがき


著者プロフィール  
高岡浩三(たかおか・こうぞう)ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEO。1983年、神戸大学経営学部卒。同年、ネスレ日本株式会社入社(営業本部東京支店)。各種ブランドマネジャー等を経て、ネスレコンフェクショナリー株式会社マーケティング本部長として「キットカット」受験生応援キャンペーンを成功させる。2005年、ネスレコンフェクショナリー株式会社代表取締役社長に就任。2010年、ネスレ日本株式会社代表取締役副社長飲料事業本部長として新しいネスカフェ・ビジネスモデルを提案・構築。利益率の低い日本の食品業界において、新しいビジネスモデルを追求しながら超高収益企業の土台をつくる。同年11月、ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEOに就任。 現在、経済同友会幹事、医療・福祉ビジネス委員会副委員長。日本インスタントコーヒー協会会長。共著書に、『逆算力』(日経BP社)がある。






<関連サイト>

【ネスレ日本】 M&Aに頼らず貫く収益成長と利益率改善 強みへの集中戦略 (ダイヤモンドオンライン 、2014年4月4日)
・・グローバル企業の日本ローカル拠点は、日本国外でのビジネスは御法度。その制約条件下での成長は称賛に値する

ネスレを世界一にした「連邦経営」 100年間の計略 (日経産業新聞、2014年8月5日



<ブログ内関連記事>

書評 『逆算力-成功したけりゃ人生の〆切を決めろ-』(高岡浩三、おち まさと=プロデュース、日経BP社、2013)-人生は有限だと感じることは究極の逆算思考である


■ロジカル経営のための基礎

書評 『無印良品の「あれ」は決して安くないのになぜ飛ぶように売れるのか?』(江上隆夫、SBクリエイティブ、2014)-徹底的に「コンセプト」にこだわることがビジネス成功のカギ
・・ロジカル経営のために必要かことはコンセプト抽出作業と共通点がある


■スイスとグローバル企業

「小国」スイスは「小国」日本のモデルとなりうるか?-スイスについて考えるために

書評  『ブランド王国スイスの秘密』(磯山友幸、日経BP社、2006)
・・ビジネスパーソンにとっては「ブランド王国スイス」という捉え方が面白い

書評 『民間防衛-あらゆる危険から身をまもる-』(スイス政府編、原書房編集部訳、原書房、1970、新装版1995、新装版2003)
・・スイスといえば、いまでは「国民皆兵」は日本人の常識になったことと思う。スイス人の家庭には、一家に一冊備え付けなのが、この本と銃器一式!


■コーポレートブランドと製品ブランド(プロダクトブランド)

「正露丸」は超ロングセラーの製品ブランドだ!
・・コーポレートブランドと製品ブランドが異なる例

製品ブランドの転売-ヴィックス・ヴェポラップの持ち主は変わり続ける
・・・・コーポレートブランドと製品ブランドが異なる例正露丸の場合は、ブランドの担い手としての所有者に変更はないが、ヴェポラッブは二転三転。製品ブランドの生命力は会社の生命よりも長い(!)ということがある

ゼスプリ(Zespri)というニュージーランドのキウイフルーツの統一ブランド-「ブランド連想」について

大学ブランドというプライベート・ブランド(PB)商品について-玉川学園の「抹茶アイス」は新製品!

「泉屋のクッキー」-老舗(ブランド)には歴史(ヒストリー)=物語(ストーリー)がある

「ポルシェのトラクター」 を見たことがありますか?

「ブルータス、お前もか!」-立派な「クレド」もきちんと実践されなければ「ブランド毀損」(きそん)につながる






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2013年7月8日月曜日

書評 『キャリア教育のウソ』(児美川孝一郎、ちくまプリマー新書、2013)-キャリアは自分のアタマで考えて自分でデザインしていくもの



『キャリア教育のウソ』(児美川孝一郎、ちくまプリマー新書、2013)は、法政大学キャリアデザイン学部で教育学を教える大学教師として、18年にわたって教え子を社会に送り込んできた人が書いたキャリア論です。

2000年初頭から急速に拡まってきた「キャリア教育」について、その功罪について考えた内容です。

基本的にヤングアダルト向けのちくまプリマー新書ですが、若者だけでなく、若者にかかわる人は読んで得るものが多い内容の本だといっていいでしょう。

どうしても教育やキャリアという生き方にかんする問題については、自分自身の狭い経験をもとに判断しまいがちな傾向があるのではないでしょうか? これは自戒も込めた反省です。

時代の激変の波をもろにかぶるのは、まずは若者たちであり、やや遅れて中高年にも及んでくるもの。それは端的に仕事にたいする考え方にあらわれてくるものであり、同時に消費行動にも大きな変化としてあらわれるものですね。

いや、むしろマーケティングにおける消費行動が先行し、人事組織における行動として現れてくるまでにはタイムラグ(=時間差)があるといったほうがただしいでしょう。

したがって、若者たちの消費行動を深く突っ込んで知るためには、同時に人事組織における意識や行動について考えることが必要です。

この20年は大人たちは「失われた20年」と決まり文句のようにクチにしてきましたが、この20年のあいだになにがどう変化してきたのか、それぞれの立場でキャリアをデザインしていく立場にある若者たちの視点で考えることは、ビジネスだけでなくこれからの日本を考えるうえで必要なことだと思います。

終わりなきプロセスとしてキャリアは自分でデザイン(=設計)していかなければならないのです。ポジティブにとらえば、自分の人生は自分でデザインできるようになったといっていいかもしれませんね。

キャリアにかんする意識がこのように大きく変化してきたという事実、これは人事組織関係者だけでなく、すでに組織内にいる人も真剣に考えてみる必要があるのではないでしょうか?

いろいろ考えさせてくれる内容です。





目 次

プロローグ  それぞれの卒業後
第1章 キャリア教育って、なに?
 1. キャリア教育の狭すぎるかたち
 2. キャリア教育の原点
第2章 ウソで固めたキャリア教育?
 1. 「やりたいこと」探しの隘路
 2. 「職場体験」って意味があるの?
 3. 「キャリアプラン」なんて、立てられるの?
 4. 「正社員モデル」の限界
エピローグ 転換期を生きるということ

著者プロフィール

児美川孝一郎(こみかわ・こういちろう)
1963年東京都生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。1996年より法政大学に勤務。2003年に新設されたキャリアデザイン学部教授。専攻は教育学。現在学部でキャリア教育論、大学院でキャリアガイダンス論を教えている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<ブログ内関連記事>

書評 『仕事漂流-就職氷河期世代の「働き方」-』(稲泉 連、文春文庫、2013 初版単行本 2010)-「キャリア構築は自分で行うという価値観」への転換期の若者たちを描いた中身の濃いノンフィクション

働くということは人生にとってどういう意味を もつのか?-『働きマン』 ①~④(安野モヨコ、講談社、2004~2007)

『重版出来!①』(松田奈緒子、小学館、2013)は、面白くて読めば元気になるマンガだ!

書評 『キャリアポルノは人生の無駄だ』(谷本真由美(@May_Roma)、朝日新書、2013)-ドラッグとしての「自己啓発書」への依存症から脱するために

月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2010年5・6月合併号「ビジネスが激変する「労働の新世紀」 働き方が、変わる。」(SPECIAL FEATURE)を読む

書評 『コンピュータが仕事を奪う』(新井紀子、日本経済新聞出版社、2010)-現代社会になぜ数学が不可欠かを説明してくれる本

「ワークライフバランス」について正確に理解すべきこと。ワークはライフの対立概念ではない!?

書評 『仕事ができる人の心得』(小山昇、阪急コミュニケーションズ、2001)

書評 『失われた場を探して-ロストジェネレーションの社会学-』(メアリー・ブリントン、池村千秋訳、NTT出版、2008)-ロスジェネ世代が置かれた状況を社会学的に分析

「就活生」はもっと中小企業に目を向けるべき-「就活生」と中小企業とのあいだに存在するパーセプション・ギャップを解消せよ!

書評 『日本でいちばん大切にしたい会社』、『日本でいちばん大切にしたい会社2』(坂本光司、あさ出版、2008、2010)





(2012年7月3日発売の拙著です)





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end

2013年6月10日月曜日

書評 『逆算力-成功したけりゃ人生の〆切を決めろ-』(高岡浩三、おち まさと=プロデュース、日経BP社、2013)-人生は有限だと感じることは究極の逆算思考である


これはじつにいい内容。一気に読めて、しかも読後の余韻の大きな本です。

祖父、父と奇しくもおなじ42歳で亡くしたというネスレ日本法人社長が語る、10歳のときに決めた「42歳を〆切に生きる」という人生観とその軌跡です。1958年生まれの著者は、現在54歳。幸いなことに親の年齢を越しました。

人生論でもあり、組織で生きるビジネスキャリア論でもあり、営業・マーケティング論でもあり、ブランド論でもあり、アイデアの生みだし方、広い意味のイノベーションついて語った本でもあります。

じつはわたしもネスレで働いていたかもしれなかったので気になる内容でした。

就活というコトバもまだなかった頃、当時まだネッスルといっていた頃、熱心にネスレの人事部の方から誘われたのだがアホなことに断ってしまったのです。

その後、とある広告代理店からブランドマネジメントをやれと要請されて、はじめて「ネスレの存在の大きさ」に気がついたのですが、もしネスレに行っていれば、この著者の部下になっていたかもしれないし、いまごろブランドの専門家か、どこかの国でグローバルに働いていたかも・・・・。人生というものは、本人にもよくわからないものです。

とはいえ、組織でのキャリアも自分で設計する時代です。その意味では、ぜひ20歳代に若い世代に読んでほしいと思います。

そしてなによりも、「縮小する成熟市場」である日本でいかに勝ち残っていくかのモデルケースでもあります。ネスレという外資系企業ですから、テリトリーは日本市場しかないのです。日本市場をでて海外で営業するわけにはいかないのです。

著者の発想には、おなじく外資系企業トリンプの社長であった吉越浩一郎氏の「デッドライン仕事術」にもつうじるものがあります。デッドライン(=締め切り)から逆算して仕事をこなせ、という発想です。

本書は、人生論として読んでよし、ビジネスキャリア論として読んでよし、営業・マーケティング論としてして読んでよし。

好著です。おすすめします。





目 次

はじめに
第1章 42歳で死ぬと思えば何でもできる
 01 あなたは何歳で死ぬと思っていますか?
 02 私が42歳で死ぬと思った理由
 03 昔の42歳は「おじさん」だった
 04 「生徒会選挙に出なさい」という母の教え
 05 竹村健一さんのテニスコーチで学んだこと
 06 「外資系企業」ネスレに入社する
 07 「志」を持った就活をせよ
 08 結婚も「42歳」からの逆算で決めた

第2章 最強の「サラリーマン」を目指せ
 09 伝説は「マギーブイヨン」から始まった
 10 取引先のパートナーが出世する幸運
 11 ハタキを持ってスーパーを回る
 12 全部で3回、会社をやめようと思った
 13 上司によって評価が変わってはいけない
 14 30歳で部長、10人超の部下を持つ
 15 「要領」がよくないと社長は務まらない
 16 移動時間のために事前に準備をする
 17 敵ができることを恐れない
 18 「骨」は崩すな

第3章 「受験にキットカット」が生まれた秘密
 19 文化になった「受験にキットカット」
 20 ブランドは誰のものか
 21「きっと勝つ」でブランドに魂を入れる
 22 異業種と組んで「ルール」を変える
 23 CD付きキットカットを発売
 24 『ケンミンSHOW』で解けた謎
 25 アイデアが夢の中で生まれる理由
 26 発想力よりも実行力
 27 広告だけでは売れない時代にどう売るか
 28 コスト削減も本質から考える

第4章 ネスレの強さと日本復活の条件
 29 スイスの企業が強いワケ
 30 100年前からグローバル企業
 31 崩れた高度成長期モデル
 32 日本の教育は江戸時代と同じ
 33 ネスレ日本という「奇跡」
 34 日本式経営の最強企業を作る


著者プロフィール

高岡浩三(たかおか・こうぞう)
ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEO 1983年、神戸大学経営学部卒。同年、ネスレ日本株式会社入社(営業本部東京支店)。各種ブランドマネジャー等を経て、ネスレコンフェクショナリー株式会社マーケティング本部長として「キットカット」受験キャンペーンを成功させる。2005年、ネスレコンフェクショナリー株式会社代表取締役社長に就任、2010年、ネスレ日本株式会社代表取締役副社長飲料事業本部長として新しいネスカフェ・ビジネスモデルを提案・構築。利益率の低い日本の食品業界において、新しいビジネスモデルを追求しながら超高収益企業の土台をつくる。同年11月ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEOに就任。現在、経済同友会幹事、医療・福祉ビジネス委員会副委員長。日本インスタントコーヒー協会会長。 
おち まさと
1965年12月23日東京都生まれ。プロデューサー。数多くのヒット番組やWEBサイトの企画、ファッション、企業ブランディングまでジャンルを越えて活躍。「対談の名手」として雑誌や書籍のインタビュアーを務めることが多く、またブログやツイッターが高いアクセス数を誇り情報キュレーターとしても信頼度が高い。企業・学校などでの講演活動も展開。厚生労働省イクメンプロジェクトメンバー、経済産業省「クール・ジャパン戦略推進事業・企業マッチンググランプリ」総合プロデュースも務める。単行本のプロデュース兼自著として『相手に9割しゃべらせる質問術』(PHP新書)、『「気づく」技術』(ダイヤモンド社)、『ありがとうの約束』(絵本、PHP研究所)、『100の仕事も同時に回る ダブルブッキング時間術』(ソフトバンク新書)、『その働き方ムダですよ~コスパを高める仕事術~』(宣伝会議)、『お金になる「頭の使い方」』(PHPビジネス新書)など多数ある。


<関連サイト>

ネスレ日本社長 高岡浩三の「逆算力」 成功したけりゃ人生の〆切を決めろ (日経ビジネスオンライン連載記事)


<ブログ内関連記事>

書評 『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済新報社、2012)-10年後の予測など完全には当たるものではないが、方向性としてはその通りだろう

書評 『英語だけできる残念な人々-日本人だけが知らない「世界基準」の仕事術-』(宋文洲、中経出版、2013)-英語はできたほうがいいが、英語ができればいいというものではない

書評 『仕事漂流-就職氷河期世代の「働き方」-』(稲泉 連、文春文庫、2013 初版単行本 2010)-「キャリア構築は自分で行うという価値観」への転換期の若者たちを描いた中身の濃いノンフィクション

製品ブランドの転売-ヴィックス・ヴェポラップの持ち主は変わり続ける

ゼスプリ(Zespri)というニュージーランドのキウイフルーツの統一ブランド-「ブランド連想」について

書評 『「気づく」技術』(おち まさと、ダイヤモンド社、2011)「企画=記憶の複合」と説く人気プロデューサーの発想術は「気づき」力のことだ

プラクティカルな観点から日本語に敏感になる-藤田田(ふじた・でん)の「マクド」・「ナルド」を見よ!




(2012年7月3日発売の拙著です)





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2011年3月8日火曜日

「ブランド・ポートフォリオ」の組み替え-日立製作所 と LVMH にみる「選択と集中」


 昨日(2011年3月7日)にビジネスニュースで大きく扱われたのは、企業の売買をめぐる日本の大企業フランスの大企業との話題でした。

 まず、日本を代表する「総合電機メーカー」である日立製作所が、HDD(=ハードディスクドライブ)事業を世界第一位のメーカー約3,500億円で米国の米ウエスタン・デジタルに売却。

 日立については特に説明する必要はないでしょう。重電から家電まで、実に幅広く事業展開を行っている、日本を代表する「総合電機メーカー」です。

 いっぽう、フランスの「総合ブランド企業」LVMH が、宝飾品ブランドのブルガリを買収、また一つ自社グループのポートフォリオを充実させました。ブルガリの創業家が保有する同社株式の51%と LVMH株を交換、買収総額は 37億ユーロ(約4,2000億円)になるとこのことです。

 LVMH は、ルイ・ヴィトン=モエ・ヘネシーの略、ブランドものバッグのルイ・ヴィトンと高級洋酒のモエ・ヘネシーを中核に、高級ブランドのみを集めた「総合ブランド企業グループ」です。

 新聞報道によれば、「日立はハイテク量産品事業から距離を置く一方、今後は社会インフラ事業に経営資源を集中させる」とのこと、買収によって入手した HDD事業では結局アドバンテージを築くことが出来ずに手放すことに。買収した側のウェスタン・テクノロジーは HDD専業メーカー、つまるところ「餅は餅屋」に強みあり、ということになります。

 LVMH の会長はブルガリを加えたことは「完璧な組み合わせ」と述べているそうですね。それにしても無限に増殖していく「ブランド帝国」。高級洋酒、ファッションブランド、宝飾品・・・。取扱商品は多岐にわたりますが、「高級ブランド」というコンセプトで一つにまとめあげた企業グループは、非常に首尾一貫した企業姿勢であるといえるでしょう。

 一言でいえば「選択と集中」。

 日立と LVMH のいずれにも共通しているのは、実体をもった企業の売買はブランドの売買でもある、ということです。無形資産であるブランドと、企業実体は相互依存関係にあります。

 自社が展開する事業にとって、見える形でのシナジー(相乗効果)があるかどうかが、意志決定の重要なポイントになります。それは顧客の目に見えるマーケティングのこともあるし、あるいは製造コスト削減など顧客の目には直接ふれないところでのシナジーでもあります。

 LVMH は、「高級ブランド」に特化することによって、消費財のなかでも顧客ターゲットを絞り込んだうえで水平展開をしていることになります。

 いっぽうテクノロジー企業である日立は、重電という産業財と家電という消費財を一緒に抱え込んでおり、マーケティングという観点からみると、現在でもまだまだ総花的な印象も強い。

 昨日、LVMH は足し算を、日立は引き算をしました。もちろん財務の裏付けのある話ですから、ブランドの売買はキャッシュフローの観点からなされます。将来的に買収価格よりも大きなキャッシュフローをもたらす可能性があれば買収し、その反対であれば早めに手を引いて売却によって得たキャッシュを別の目的に使用することもできます。

 つまるところ、「ブランド・ポートフォリオ」の組み替えは、「財務ポートフォリオ」の組み替えでもある、ということです。

 「選択と集中」という表現はかつて流行語とさえなっていましたが、この国ではブームが去ると実体もなくなったと思われがちなもの。

 ところが、「ブランド・ポートフォリオ」という観点からみるると、いわゆる「総合企業グループ」の行動原理が見えてくるというわけですね。

 ではまた。



<関連サイト>

日立製作所(公式サイト)
LVMH(公式サイト 日本語)

ウエスタン・デジタル(Western Digital)(公式サイト 英語)
ブルガリ(Bulgari)(公式サイト 日本語) 




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