2011年2月2日水曜日
書評 『CoCo壱番屋 答えはすべてお客様の声にあり』(宗次徳二、日経ビジネス人文庫、2010 単行本初版1995に改題加筆)
■お客様のクレーム情報を読み込んで得た数々の知恵が「生きた教科書」として結実■
カレー専業のチェーン店 CoCo壱番屋(ココイチ)の創業者が自ら書いた「生きた経営書」である。
15年前に出版された著書を、すでに経営の一線から退いた創業者があらためて読み直し、改題のうえ加筆修正したものである。15年前に出版したビジネス書が現在でもなお新鮮に映るのは、基本がしっかりしてブレがないからであろう。
そういえばここのところココイチにいってないなあ、近所にないからなあ、などと思いながら読み始めたが、読んでいてものすごく勉強になる本であることがわかった。
まさに飲食サービスの教科書なのだが、お客様の気持ちからすべてを考えるという姿勢がこれほど徹底している会社はないのではと思わされる。
お客様の気持ちといっても、この本では抽象的な表現には終わっていない。
アンケート葉書に書き込まれたお客様のナマの声が多数取り上げられ、たとえお店にとって不都合なクレーム情報であっても、著者によって具体的に紹介され、人間心理への深い洞察力に支えられたコメントがつけられているのだ。お客様から投函されたアンケート葉書を、毎朝5時に出勤してすべて読むことから仕事を始めていたという著者自らが目を通した成果なのである。
私自身は飲食サービス業に従事しているわけではないが、多くの「気づき」をいただいた。この本で具体的に指摘されている、いっけん細かい点に注意することが、繁盛店になるためには重要なことなのだ。
「こうすればよくなる」を書いた本は多いが、ここまでクレーム情報を取り上げて、クレームで指摘された点を、よく考えたうえで直していけばよいと書いてある本はめったに見ない。しかも、プラス思考が首尾一貫している。創業経営者が長年にわたって観察してきた知恵がエッセンスとして惜しみなく散りばめられた本なのである。
身近なチェーン飲食店を題材にした本は、読者にとっても無縁の世界ではないので、アタマだけではなくココロもカラダも含めてすんなりと理解しやすい。お薦めである。
ひさびさにココイチにいって、カツカレーでも食べに行ってくるかな。
(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2011/02/coco-20101995.html にて)