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2014年7月1日火曜日

書評 『日本サッカーはなぜシュートを撃たないのか?』(熊崎敬、文春文庫、2014)-日本サッカーの病理を「反面教師」にして企業経営に即して考えてみることをすすめたい


FIFAワールドカップ2014ブラジル大会、すでに決勝トーナメントのステージに入っていますが、そこには日本の姿はまったくありません。一次リーグを最下位で敗退したためです。

日本代表チームの問題の「惨敗」については、いろいろ思うことのある人も少なくないのでないでしょうか。

過ぎたことは仕方ない、負けにこだわっていては敗北主義に支配されてしまう、また4年後があるからがんばってもらえばそれでいいじゃないか。そんな感想もあるでしょう。ある意味では楽観論でありますが、しかしながら健忘症になってしまう恐れがないとはいえません。


日本サッカーの「病理」について考える

わたしは、今回の「惨敗」はいままでのサッカー日本代表の悪い面が集中的に顕在化したのではないかという印象をぬぐいさることができません。

今回のワールドカップではアジア勢はすべて敗退し、中南米とヨーロッパのチームだけが勝ち残りました。こういう風に言うと、日本ではまだまだサッカーが「文化」として定着していないからという指摘がかならずでてきますが、「文化論」の話はあまりしたくありません。

問題点は、端的にいって「個」と「組織」の問題ではないでしょうか。

ここでいう組織とは目的をもって結成された人間集団のこと。サッカーでいえば「チーム」のことをさしています。とりあえずフロントのことは脇においておきます。

個々の選手をとってみれば、「個」としてヨーロッパのプロリーグでも活躍している日本人選手も少なくないのに、なぜかれらが日本代表チームという「組織」になると、その強みを発揮することができないのか?

日本人選手もヨーロッパのチームではそのポジションとしての「役割期待」を果たしているからこそ評価されているわけですが、日本代表チームになると、「試合で勝つ」というチームのレゾンデートル(=存在意義)が徹底していないのではないか、という疑問を感じてしまいます。

「勝つ」ということには二つの意味があります。文字どおり点差をつけて勝つということと、たとえ引き分けであっても負けない、ということです。このことについては、Winning is NOT everything, but Losing is Nothing ! という記事で過去に書いたことがあります。

どんな手段をとっても、負けなければいつかは勝つことができる勝つための一瞬のチャンスを見逃さず、カウンターで突破してシュートする。これはデフェンス重視のヨーロッパサッカーに見られる思想でもあります。


日本サッカーの病理を「反面教師」にして考えてみる

日本代表チームの「惨敗」のあと、『日本サッカーはなぜシュートを撃たないのか?』(熊崎敬、文春文庫、2014)という本が出版されていることを知りました。文庫オリジナルだそうです。

この本を読むと、問題は「個」と「組織」だけではなく、もっと根が深いものであることがわかってきます。

帯には「2014年ブラジルワールドカップ直前 サッカーの見方が劇的に変わる本!」とあります。わたしはこの本は、「惨敗」後のいまこそ読むべき本だと思います。

帯のウラにはこうあります。

●テレビに向かって「なぜ撃たないか?!」と叫んだことのある人
●過去のワールドカップにおける日本代表の戦いぶりに不満な人
「自分たちのサッカー」という言葉が嫌いな人
サッカーは結果がすべて、と考えている人
●日本における育成年代のコーチングに疑問を感じている人
●サッカーというスポーツの本質を知りたい
→ 本書はそんな人たちのために書いた本です


わたしはすべてについて同意するわけではありませんが、すくなくともこの箇条書きの上から3つにかんしては全面的に同感です。

サッカーに限らず、シュートを撃たなければ、つまり点を取らなければ試合には勝てないという当たり前の事実がなぜなおざりにされているのか? こんなこと小学生でもわかることですね。

試合に勝つという「目標」があって、そのために戦略があり、こまかい戦術がある。目的と手段の関係は企業業経営でも同じです。

どうやら日本サッカーは、戦術を重視しすぎて、肝心要の目標や戦略がどこかへ行ってしまい、本来は「手段」であるはずの戦術が自己目的化してしまっているようです。著者の熊崎氏は「手段の目的化」と表現してますが、これもまた日本企業においてよく観察されるものです。

「型」として戦術を徹底させることは初期段階としては必要なことですが、実際の試合というものは戦術どおりの試合展開などそう簡単には実現しないもの。対戦相手という敵とのからみで、瞬間瞬間に局面が複雑に展開する状況のなかで、いかに臨機応変に判断し動くかが、中級以上にもとめられるものです。

「自分たちのサッカー」という表現は、相撲とりがよくクチにする「自分の相撲を取る」という表現を想起させるので不快に思ってきました。「自分たちのサッカー」では何を意味しているのか第三者に説明することはできません。ある種の思考停止状態です。

「自分たちのサッカー」をさせてもらえなかったという釈明ほどふざけたものはないのではないでしょうか? 会社でこんなセリフを吐いたら、間違いなくイエローカードです。「なぜ勝てなかったのか自分で考えろ!」という叱責されるのが当たり前です。

著者は、サッカージャーナリストとして、20年以上にわたって世界中で観察してきた体験から、サッカーというスポーツの本質から考えると、日本人はあまりにもマニュアル思考になりすぎていること、リアル世界の物事をコンピュータゲーム的に捉えすぎていること、自分のコトバや発想にとらわれてしまう傾向など指摘しています。

「個」と「組織」にかんしても、ブラジルサッカーのチーム設計が「一対一」の二人組ペアから組み立てていることも指摘しています。これは組織力で個の弱さをカバーするという発想(・・思い込み?)の強すぎる日本サッカーとは真逆の思想というべきでしょう。

「型」志向や「コトダマ」思考の負の側面がもろにでていると言い換えてもいいかもしれません。「型」や「コトダマ」はうまくポジティブに使えば大きな効果を発揮するのですが、とらわれて思考停止状態に陥ってしまう危険と隣り合わせです。

わたしはこの本を読みながら、著者が日本サッカーの病理として指摘していることは、そっくりそのまま日本企業にも当てはまるのではないかという気持ちにさせられました。

その意味では、日本サッカーを「反面教師」として、企業経営を振り返るためのビジネス書として読む価値があるといっていいかもしれません。あえてこのブログで取り上げたのはそのためです。

サッカーが好きでもそうではなくても、いろんなことを考えさせられる「本質論」に迫った本だと言えるでしょう。おすすめです。





目 次 

第1章 日本サッカーはなぜシュートを撃たないのか?
第2章 日本のスタジアムで考えたこと
第3章 世界のスタジアムで考えたこと
第4章 サッカーの本質を知っている男たち
あとがきにかえて なんのためにシュートを撃つのか?

著者プロフィール

熊崎敬(くまざき・たかし)
昭和46(1971)年、岐阜県出身。明治大学卒業後、「サッカーダイジェスト」「Sports Graphic Number」編集部を経て、フリーランスに(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


PS 2014FIFAワールドカップ ブラジル大会の決勝戦にみるドイツの強さ

決勝戦のドイツ対アルゼンチンは延長戦の後半でドイツが1点先取して優勝。ドイツにはアルゼンチンのメッシのようなスーパー選手はいなくても、組織力の高さで今回の代表チームのなあkではピカイチであったことが証明された。だが、「組織力」とはいっても日本とは段違いである。ドイツは個々の選手の技量も士気も高く、あくまでも「個を基盤とした組織力」である点が強く印象に残った。現在ドイツのプロリーグででプレイする日本人選手も多いこともあり、日本に求められているのは、ふたたびドイツを模範にすべきではないかとも思うのだが・・ (2014年7月14日 記す)



<ブログ内関連記事>

「FIFAワールドカップ2014」における日本の「惨敗」-「個」の力がまだまだ弱く「組織力」に統合されていないのが日本の現実

Winning is NOT everything, but losing is NOTHING ! (勝てばいいいというものではない、だけど負けたらおしまいだ)

コトダマ(きょうのコトバ)-言霊には良い面もあれば悪い面もある

「希望的観測」-「希望」 より 「勇気」 が重要な理由

「サッカー日本代表チーム」を「プロジェクト・チーム」として考えてみる

日体大の『集団行動』は、「自律型個人」と「自律型組織」のインタラクティブな関係を教えてくれる好例

書評 『「言語技術」が日本のサッカーを変える』(田嶋幸三、光文社新書、2007)-「論理力」と「言語力」こそ、いま最も日本人に必要なスキル

合気道・道歌-『合気神髄』より抜粋
・・「すきもなく たたきつめたる敵の太刀(たち) みなうち捨てて 踏み込みて斬れ」、「敵多勢(たぜい) 我を囲みて攻むるとも  一人の敵と思い戦え」、「敵の太刀(たち) 弱くなさむと思いなば まづ踏み込みて 敵を斬るべし」 ⇒まずは「一対一」がすべての基本。この組み合わせがすべての基盤となることは、サッカーという西欧由来の近代スポーツ導入以前に日本人の「常識」であったはずだ!




(2012年7月3日発売の拙著です)








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2014年5月7日水曜日

ディエン・ビエン・フー要塞陥落(1954年5月7日)から60年-ヴォー・グエンザップ将軍のゲリラ戦に学ぶ


本日は、ディエン・ビエン・フー要塞陥落(1954年5月7日)から60年

「第一次インドシナ戦争」でフランスが大敗を喫した戦いです。この日から約5ヶ月後に、フランスはベトナムから完全に撤退することになったわけです。

ディエン・ビエン・フーはラオス国境に近い山岳地帯。フランス軍は「外人部隊」が中心だったようですが、かなり過酷な戦いであったようですね。3万人の将兵のうち2千人以上が戦死し、1万人が捕虜となった、と。

(Aがディエン・ビエン・フー ラオス国境に近い その東がハノイ)


この『人民の戦争・人民の軍隊-ヴェトナム人民軍の戦略・戦術-』(中公文庫BIBLIO、2002)という本は、ディエン・ビエン・フー要塞陥落に導いた「赤いナポレオン」と呼ばれたベトミンヴォー・グエン・ザップ将軍の著書。

第5章が「ディエン・ビエン・フー」にあてられてます。第6章「勝利への道」と内容的には重なります。



(ディエン・ビエン・フーの攻略 『人民の戦争・人民の軍隊』より)


「強ければかわし 弱ければ攻める」というフレーズは、まさにゲリラ戦の神髄。「小」がいかにして圧倒的な「大」を倒すかというテーマは、ビジネスにも示唆するところがきわめて大でありますね。

ベトナム戦争というと、どうしてもアメリカという連想でしょうが、植民地の支配者として君臨してきたフランスが撤退したあとに本格的に介入したのがアメリカでした。本格的な介入を決めたのがケネディ大統領であったことはアタマのなかにいれておきたいもの。

グエン・ザップ将軍は昨年92歳で亡くなりました。ゲリラ戦の指導者というとチェ・ゲバラが有名ですが、アジア人としては毛沢東とともにヴォー・グエン・ザップの名前も記憶しておきたいものです。

戦略・戦術というものは、イデオロギーとは関係なく考え抜けば応用可能。つまらないビジネス書より戦争もののほうが面白いのはそのためですね。




目 次

第1章 人民の戦争・人民の軍隊
第2章 党は武装蜂起の準備と一九四五年八月の総蜂起を成功裏に指導した
第3章 党はフランス帝国主義者とアメリカ帝国主義者との長期抵抗戦争を成功へと導く
第4章 党は人民の革命軍の建設を成功裏に指導した

第5章 ディエン・ビエン・フー 
 1. 1953年冬季・1954年春季における軍事概況の要約
 2. 戦略の指導
 3. ディエン・ビエン・フーにおける作戦指導
 4. 戦術上の諸問題
 5. 軍の指揮
 6. 前線役務に従事する人民
 7. 解放戦争とはディエン・ビエン・フーにおける戦い
第6章 勝利への道 
 1. 1953年夏季における軍事概況
 2. 敵のあらたな陰謀「ナヴァール計画」
 3. 1953年冬季・1954年春季における計画と軍事概況
 4. 歴史的ディエン・ビエン・フー作戦
注釈
訳者あとがき
地図
解説 神浦元彰


著者プロフィール  

ヴォー・グエン・ザップ(Võ Nguyên Giáp)
1911~2013。ヴェトナム北部の広平省に生まれる。1926、27年フエ市内の学校ストライキに参加する過程で反仏運動に加わる。32年頃からハノイのリセでフランス史の講師。40年6月ファム・バン・ドンと雲南に脱出、昆明でホー・チ・ミンに出会う。44年に武装宣伝解放軍を作り、ヴェトナム人民軍の基礎を創設。八月革命後のインドシナ戦争においては、同軍最高司令官としてディエン・ビエン・フー作戦など数々の戦いを指揮。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものに加筆)。

翻訳者プロフィール

真保潤一郎
1923年東京生まれ。42年、陸軍士官学校卒。従軍、抑留、追放を経て、専修大学経済学部、法学部卒。出版社勤務後、高崎経済大学、大東文化大学を経て、一橋大学社会学博士、高崎経済大学名誉教授。現在、長崎国際大学教授 (本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)

三宅蕗子
東京生まれ。外資系企業に勤務後、群馬女子短期大学助教授を経て教授(2001年退職)。青山学院大学大学院経営学修士。東洋大学大学院社会学研究科博士課程中退(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<ブログ内関連記事>

Winning is NOT everything, but losing is NOTHING ! (勝てばいいいというものではない、だけど負けたらおしまいだ)
・・「勝たなくてもいい、負けなければいいのだ」というベトコンの戦略方針

ベトナムのカトリック教会

Vietnam - Tahiti - Paris (ベトナム - タヒチ - パリ)

シハヌーク前カンボジア国王逝去 享年89歳(2012年10月15日)-そしてまた東南アジアの歴史の生き証人が一人去った
・・ベトナムにラオスとカンボジアを加えた三カ国が「仏領インドシナ」と呼ばれていたフランスの植民地であった。このなかではベトナムがフランスにとってはいちばん儲かる存在であった

『東南アジア紀行 上下』(梅棹忠夫、中公文庫、1979 単行本初版 1964) は、"移動図書館" 実行の成果!-梅棹式 "アタマの引き出し" の作り方の実践でもある
・・「ベトナム人は勤勉で、エネルギッシュである。勤勉という点では、わたしの見たかぎりでの東南アジアの諸民族の中では、ベトナム人が一ばんである」(第15章)




(2012年7月3日発売の拙著です)





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2014年2月24日月曜日

書評 『ヤバい経営学-世界のビジネスで行われている不都合な真実-』(フリーク・ヴァーミューレン、本木隆一郎/山形佳史訳、東洋経済新報社、2013)-これがビジネス世界の「現実」というものだ



『ヤバい経営学-世界のビジネスで行われている不都合な真実-』(フリーク・ヴァーミューレン、東洋経済新報社、2013)は、ビジネスやマネジメント世界の住人、あるいはその世界に関心がなければ面白くもなんともない本でしょうが、その世界にいると 「これはじつに面白い!」 といった内容の本です。 

英語タイトルは Business Exposed : The Naked Truth about What Really Goes on in the World of Business (2010)、つまり真相解明の暴露もの、といった感じでしょうか。著者はオランダ出身でロンドン・ビジネススクールのMBAコースで組織論とアントレナーシップを教えている準教授。

いろんな経営理論がつぎからつぎへと生まれ、ウイルスのように伝染したのち、あっという間に消えていくのがビジネス世界ですが、そういった流行りものの理論に対して胡散臭いと感じたり、ほんとうは違うんじゃないの?とうすうすと感じている人は、読み進めるうちに納得の連続になることでしょう。

みずからの直観を豊富な学術論文のエッセンスで跡付けているのが本書の特色。事例はどうしても英国と米国を中心にした英語圏のものが多いですが、著者がオランダ人であることもあってオランダ企業も多数取り上げられています。

この本で展開される議論のキモは、ビジネスやマネジメントの世界における「因果関係」についての注意を喚起している点でしょうか。

原因と結果の関係というものは、かならずしも一対一の関係ではないし、時間的なスパンをどうとるかでまったく異なる結論がでてくるもの。原因と結果が逆転して語られていることもじつに多い。

たんなる相関関係にすぎないものを因果関係だと思い込んでいる人がじつに多いという嘆かわしい現実は、ビジネス世界においても同じということですね。

短期的にはすぐ効果のでる経営施策であっても、副作用というものは時間がたってから顕在化するもの。たとえば、リストラという名の人員削減は長い目でみて効果ないだけでなく有害であることが経営学の学術研究で明らかになっていることが紹介されていますが、日本人なら十分に納得のいくことでしょう。

企業経営をサステイナブル(=持続的)に行っていくためには、流行りの経営理論に飛びつくのは考えものだということですね。

ビジネスの世界に長くいると、本書に書かれている内容はまったくそのとおりだと思います。はっきりいってしまえば、「常識」といってもいいような話ばかりです。とはいえ、アタマでっかちの人たちには納得がいかないかもしれませんが・・・

結局のところ、ヒトによって成り立っているのがビジネス。根本のところでは、英語圏であれ日本であれ、本質的には変わらないことを実感させてくれる内容でもあります。

ただし、当然のことながら「これをやればかならず効果がでる!」なんて処方箋はこの本には書かれていません。

翻訳もよくこなれているので、それほどムリなく読めると思います。




目 次

日本の読者の皆さんへ
Introduction モンキーストーリー
Chaper 1 今、経営で起きていること
Chaper 2 成功の罠(とそこからの脱出方法)
Chaper 3 登りつめたい衝動
Chaper 4 英雄と悪党
Chaper 5 仲間意識と影響力
Chaper 6 経営にまつわる神話
Chaper 7 暗闇の中での歩き方
Chaper 8 目に見えるものと目に見えないもの
Epilogue 裸の王様
訳者あとがき
参考文献

著者プロフィール


フリーク・ヴァーミューレン(Freek Vermeulen)

ロンドン・ビジネススクール准教授。オランダ・ユトレヒト大学で組織論、ティルブルフ大学で経営管理の博士号を取得。専門は戦略論とアントレプレナーシップで、主にMBAとエグゼクティブMBAプログラムで教鞭をとっている。東芝、BP、フィアット、IBM、KPMG、ノバルティス、ボーダフォンなど、大企業の経営層のアドバイザーを務めるとともに、一般紙・専門誌への寄稿多数。Academy of Management Journalの最優秀論文賞を受賞、現在は同誌を含めた経営ジャーナル4誌の編集委員を務める。ロンドン・ビジネススクールでは、ベストティーチャー賞と最優秀授業賞を受賞。『フィナンシャル・タイムズ』紙上で「ライジングスター」と称される。本書は英語・日本語の他に中・韓・露・蘭の4カ国語でも出版されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

訳者プロフィール
本木隆一郎(もとき・りゅういちろう)
神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。大日本印刷の経営企画部にて子会社の再建や競合企業のM&Aに携わる。その後、IBMビジネスコンサルティングサービスにて、主に銀行、証券、海運のコンサルティングに従事。ロンドン・ビジネススクール修了(MBA)。現在、外資系ヘルスケア企業に勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

訳者プロフィール
山形佳史(やまがた・よしふみ)
東京都生まれ。一橋大学商学部卒業。日本IBMで大企業向けシステム構築・運用プロジェクトに携わる。その後、IBMビジネスコンサルティングサービスで、幅広い業界におけるオペレーション、IT戦略にかかわるコンサルティングプロジェクトに従事。ロンドン・ビジネススクール修了(MBA)。現在、コンサルティング会社に勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<ブログ内関連情報>

経営学関連

書評 『経営管理』(野中郁次郎、日経文庫、1985)-日本の経営学を世界レベルにした経営学者・野中郁次郎の知られざるロングセラーの名著

書評 『経営の教科書-社長が押さえておくべき30の基礎科目-』(新 将命、ダイヤモンド社、2009)-経営者が書いた「経営の教科書」

書評 『仕事ができる人の心得』(小山昇、阪急コミュニケーションズ、2001)-空理空論がいっさいない、著者の実践から生まれた「実践経営語録」

M.B.A.(経営学修士)は「打ち出の小槌」でも「魔法の杖」でもない。そのココロは?

アジアでは MBA がモノを言う!-これもまた「日本の常識は世界の非常識」

レンセラー工科大学(RPI : Rensselaer Polytechnic Institute)を卒業して20年 ・・わたしはこの大学のMBAコース(MOT)を卒業


オランダ関連

書評 『植物工場ビジネス-低コスト型なら個人でもできる-』(池田英男、日本経済新聞出版社、2010)
・・・オランダの先進植物工場モデル

書評 『チューリップ・バブル-人間を狂わせた花の物語』(マイク・ダッシュ、明石三世訳、文春文庫、2000)-バブルは過ぎ去った過去の物語ではない!
・・17世紀オランダの「バブル経済」

書評 『ニシンが築いた国オランダ-海の技術史を読む-』(田口一夫、成山堂書店、2002)-風土と技術の観点から「海洋国家オランダ」成立のメカニズムを探求

「フェルメールからのラブレター展」にいってみた(東京・渋谷 Bunkamuraミュージアム)-17世紀オランダは世界経済の一つの中心となり文字を書くのが流行だった
・・フェルメールとスピノザをつなぐものは光学レンズであった









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2013年12月4日水曜日

書評 『個を動かす-新浪剛史 ローソン作り直しの10年-』(池田信太郎、日経BP社、2012)-「個」が重要な時代に取り組んだ「組織変革」の軌跡


セブンイレブン(7-11)が日本で誕生して2013年11月で40年(!)になりましたが、日本でこの業態を切り開いた最大手のセブンイレブンとはまったく真逆の組織戦略で作り直されたのが二番手のローソン。

そのローソンを「自律分散型組織」として再生させたのが新浪剛史氏です。「万年2位」に甘んじていた従業員の意識をいかに変革したか、この本でその10年間の取り組みを時系列と機能ごとの変革を概観することができます。

セブンイレブンが鈴木敏文会長を中枢頭脳とする「中央集権型」とすれば、ヒト・モノ・カネの経営資源では劣るローソンは苦肉の策として「自律分散型組織」で社員や加盟店オーナーのやる気を引き出す方向しかなかったわけです。

つまり限られたリソース(=経営資源)をいかに巧みに組み換え、「勝つべき地点」を設定しるといいう戦略とその実行が「自律分散型組織」であったわけです。

具体的な経営施策は以下のとおりです。

まずは変革の起爆剤として「成功体験」を作り、人材面では「ダイバーシティ(=多様性)と分権」を導入し、パートナーとしてのフランチャイズオーナーの地位を上げ、、「マネジメント・オーナー」制度を導入してやる気のある加盟店オーナーを育て、脱POSシステムの観点から「個」としての消費者動向をつかむためメンバーカードをベースにした「CRM」に挑戦し、新規分野にヒトを回すため業務改善の「BPR」に取り組む。

いずれも小売業とコンビニの常識に大胆に挑戦したものです。

そして仕上げとしては、ガバナンスのための集団経営体制にむけて、カリスマ経営に頼らない体制をつくる。

ローソンの組織変革の中核にあるものは「自律分散型組織」ですが、これはできるだけ現場に近い部署に権限を委譲し、現場の創意工夫を引き出す経営スタイルのことです。「自律分散型組織」は「自律型人材」を必要とします。

そしてまた、「自律型人材」になればなるほど遠心力が働きますので、一方では人材を組織人としてまとめていくための求心力が必要になります。それが経営理念です。

「自律分散型」か「中央集権型」は二者択一ではありません。企業が置かれている状況によって異なる選択肢です。

ベンチャー立ち上げから初期段階では当然のことながら強いリーダーによる中央集権型組織で一点集中突破、しかしつぎの段階以降では自律型組織に転換していくのが望ましいでしょう。

企業組織の内部で「個と組織」をどうバランスさせるか、そして基本的に「個」である消費者の心をどうつかむか、これは永遠のテーマであります。キーワードは「個」にあるのです。




目 次

はじめに
第1章 試された「分権経営」-ドキュメント・東日本大震災
第2章 迷走する経営と上場の「傷跡」-社長就任前夜
第3章 一番うまいおにぎりを作ろう-「成功体験」を作る
第4章 「田舎コンビニ」を強みに転じる- 「ダイバーシティーと分権」の導入
第5章 オーナーの地位を上げましょう-「ミステリーショッパー」の導入
第6章 加盟店オーナーにも「分権」-「マネジメント・オーナー」の誕生
第7章 「個」に解きほぐされた消費をつかむ-「CRM」への挑戦
第8章 「強さ」のために組み替える-「BPR」の取り組み
第9章 僕が独裁者にならないために-集団経営体制と新規事業
第10章 人間・新浪剛史-その半生
【インタビュー】スクウェア・エニックス 和田 洋一社長 「起業家ではない経営者」という同類から

著者プロフィール

池田信太朗(いけだ・しんたろう)
『日経ビジネス』記者。ビジネス情報誌『日経ネットブレーン』、中小企業向けIT情報誌『日経IT21』、『日経アドバンテージ』、定年退職者向けライフスタイル誌『日経マスターズ』の編集・記者などを経て、2006年から『日経ビジネス』で小売り業界を中心に取材、執筆。2011年12月に『日経ビジネスDigital』の立ち上げを担当し、2012年1月から編集長。2012年9月から香港支局特派員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<ブログ内関連記事>

書評 『爆速経営-新生ヤフーの500日-』(蛯谷 敏、日経BP社、2013)-現在進行中の「組織変革」ドキュメント第1章とその前夜の舞台裏

書評 『星野リゾートの事件簿-なぜ、お客様はもう一度来てくれたのか?-』(中沢康彦、日経トップリーダー編、日経BP社、2009)-「現場」がみずから考え実行する組織はどうやったらつくれるのか
・・星野社長は慶応義塾大学アイスホッケー部出身

書評 『経営管理』(野中郁次郎、日経文庫、1985)-日本の経営学を世界レベルにした経営学者・野中郁次郎の知られざるロングセラーの名著
・・「知的体育会系」というのは野中教授のネーミング

アムンセンが南極に到達してから100年-西堀榮三郎博士が説くアムンセンとスコットの運命を分けたチームワークとリーダーシップの違い
・・自律型人材によるチームワークとリーダーシップ

書評 『オーケストラの経営学』(大木裕子、東洋経済新報社、2008)-ビジネス以外の異分野のプロフェッショナル集団からいかに「学ぶ」かについて考えてみる
・・「(フラットな組織である)オーケストラにおいては、個々の演奏者が、いかに他の演奏者とのハーモニーをつくり出すことができるかということであり、別の表現をつかえば、いかにチームワークを作りあげるかということになる。「もともと日本には、教会の響きのなかで賛美歌を歌いながらハーモニー(調和・和声)を創っていくという習慣がない。そのため、お互いの音を聴き合ってハーモニーを創っていくという意識が、どうしても低くなっているようにみえる」(P.157~158)」 日本と西欧との大きな違い。

「やってみなはれ」 と 「みとくんなはれ」 -いまの日本人に必要なのはこの精神なのとちゃうか?
・・2014年にサントリーの次期社長にローソン会長の新浪氏がスカウトされ内定。「やってみなはれ」精神の持ち主と評価されてのことだという

(2014年3月19日、7月3日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です 電子書籍版も発売中!)





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