NHKの朝の連ドラ 『カーネーション』(放送は、2011年10月6日から半年間)が面白いですね。商売のなんたるかを終えてくれる番組になっています。
たまたま昼休みの時間帯に再放送を見たのですが、これがじつに面白かったので、それ以来、毎日見るようにしてています。
主人公は「だんじり」で有名な大阪岸和田の呉服屋の娘。呉服屋の娘が、和装の時代に洋服つくりで身をたて、三人の娘を立派に育て上げるという物語です。
NHKの朝ドラの王道として、戦前から戦後にかけての「昭和時代」を生きぬいた庶民の哀感を描いたものですね。
意外と知らずに毎日見ている人が少なくないようなのですが、じつは世界的なファッション・デザイナ-になったコシノ三姉妹の母がモデルなのです。
ドラマでは「オハラ洋装店」となっていますが、ほんとうは「コシノ洋服店」です。原作は 『コシノ洋装店ものがたり』(小篠綾子、講談社+α文庫、2011 単行本初版タイトルは「やんちゃくれ」 2001)。
新年2012年になってからの放送は、敗戦によって一時は虚脱状態になった日本人もなんとか生きぬかなくてはならないと、気張ってますね。戦争未亡人となった主人公ですが、その生き様はほんとうにたくましい。
戦前はハイカラだった日本も、戦時中は 「贅沢は敵だ」や「パーマネントはやめましょう」というスローガンが横行しており、洋服屋にとっては受難の時代だったこともあるのでしょう。それが終わったという開放感が背景にはあるようですね。
■商売人が生きた「昭和時代」を経済の観点から見ると得るものが多い
ところでビジネスパーソンとして注目したいのは、敗戦後の経済状況が商売にどういう影響を与えたかという点です。
日本は敗戦によって戦時国債は紙くずとなってしまいました。戦費調達のために国民に買わせた戦時国債が、ハイパーインフレのために価値を失い、紙くずと化してしまいました。
日本の財政はクラッシュしたのです。現在のギリシアと同じく、日本も近代になってから一度は財線破綻しているのです。
1946年(昭和21年)に実施された「新円切り替え」や「預金封鎖」といった経済史上の出来事が、具体的な庶民の生活だけでなく、とくに主人公の商売に与えた影響はしっかりと見ておきたいところですね。キチンと描いてくれることを期待しています。
現在の日本もまた、敗戦時と同様、財政がクラッシュする可能性があるからです。一度あることは二度あるかもしれないからです。
財政がクラッシュしたあと、日本人はどう生きぬいたか、これは歴史的事実としてアタマのなかに刻み込んでおきたいものです。シナリオ思考のためには、まずは歴史的事実をよく知っておかねばなりません。
すでに65年前のことなので、体験者から直接に話を聞く機会も少ないでしょうし、また話を聞いてもピンとこないかも知れません。ですから、ドラマで追体験してほしいと思うのです。
もちろん、ドラマはドラマとして、単純に楽しんで見たいものであることは言うまでもありません。
ちなみに、主演の尾野真千子は奈良県五條市出身なので、関西弁がナチュラルなのもいいですね。
<関連サイト>
連続テレビ小説 『カーネーション』 あらすじ (NHK)
NHKドラマがミャンマーで放送へ-連続テレビ小説「カーネーション」と大河ドラマ「篤姫」 民政移管後初めて- (平成25年6月6日付)
・・いまさら『おしん』ではないだろうという感想だけでなく、『カーネーション』は和装という民族衣装があたりまえだった時代に、洋装普及に人生をかけた女性の物語だけに、おなじ状況にあるミャンマーの人たちにも大いにアピールするのではないだろうか。『カーネーション』は2014年3月3日からミャンマーで放送が始まったようだ。(2014年3月5日 記す)。
<ブログ内関連記事>
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