これから「アジア」に企業進出を考えている中堅中小企業の社長やナンバー2は、まずは2011年に出版された本を2冊紹介します。
『なぜ中小企業の中国・アジア進出はうまくいかないのか?-「後悔しない」成功マニュアル-』(日経トップリーダー編、日経BP社、2011)
『アジアで成功する企業家の知恵』(増田辰弘/馬場 隆、めこん、2011)
出版されたのは『アジアで成功する企業家の知恵』のほうですが、読む順番は変えて『なぜ中小企業の中国・アジア進出はうまくいかないのか?』から読んだほうがいいいでしょう。
なぜなら成功談だけを読んでも、そのまま自分の会社にあてはめることが難しいからです。
『アジアで成功する企業家の知恵』は、一般的な成功法則というよりも、なんとかアジアで勝ち残っている中小企業を事例として取り上げています。
国内であれ、国外であれ、あたらしい事業というものはベンチャーである以上、絶対に成功する保証はどこにもありません。
しかも、国内で成功した経験をもっていると、逆に「成功の罠」にはまって、日本での成功法則が通用しない海外で手痛い失敗をしてしまう可能性がなくもありません。
なぜ失敗したのか、失敗をどう乗り越えて現在の成功に結びつけたのかを知る方が、じつは「急がば回れ」で実り多いこともあります。
成功した事例より、失敗した事例のほうがじつは多いのですが、オモテにでてこないだけなのです。もちろん、本として取り上げられるのは、過去に失敗はしたが、現在は成功しているという事例が中心になります。そうでなければ、喜んで失敗談を語ることはないでしょうから。
『なぜ中小企業の中国・アジア進出はうまくいかないのか?-「後悔しない」成功マニュアル-』(日経トップリーダー編、日経BP社、2011)の目次を紹介しておきましょう。
中国と東南アジアのベトナム、タイ、インドネシアを取り上げています。
中国
迷っているなら、まず動き出す
進出はここから始める
絶対に手を抜けない
成功に導く「人」「モノ」「金」
進出のメリットを最大限に発揮
社長力で事業を加速する
現地で誰もが悩まされる
トラブルはこうして克服
100人アンケート調査
中国の中小企業社長の本音
アジア
「チャイナ・プラス・ワン」筆頭の実力は本物か?
ベトナムでの勝ち方
企業集積は「名古屋並み」で町工場、非製造業に商機
タイからアジアを攻略
人口世界4位、2億3800万人の需要が立ち上がる
インドネシア進出のコツ
わたしがつよい印象を受けたのは、社長の「対話力」がカギだという指摘がされている点です。「あ・うん」の呼吸がいっさい通用しないのが海外。これは中国だけでなく、東南アジアでも同じことです。キチンと相手の言うことに耳を傾けて、しかも言うべきことは言うという姿勢が求められます。
とはいえ、同じ人間どうし、共感するチカラがものを言うのは日本でも海外でも同じです。ここで働くのは、人間力そのものでしょう。
しかし、気が抜けないのもまた海外。海外進出とはホームでの戦いではなく、あくまでもアウェーでの戦いなのです。プレッシャーに耐え抜く精神力も重要です。
語学については、実践的なアドバイスがコラムのなかで紹介されています。「NHK中国語講座の4月と5月」だけで十分だ」、と。要は、信頼できる現地パートナーを見つけることが大事。なんといってもアウェーなのですから、日本の常識は通用しません。
『アジアで成功する企業家の知恵』(増田辰弘/馬場 隆、めこん、2011)は、長年アジアで活躍する企業家を取材してきたジャーナリストの取材記録を編集したもの。
ヒト・モノ・カネの経営資源では大企業の劣る中小企業が、海外で成功するには、具体的にどんなアタマの使い方をしているかの実例が多数紹介されています。
目次を紹介しておきましょう。
第1部 ビジネスマンのためのアジア情報
大づかみに知るアジアの変化
アジア・ビジネスで失敗しないために
変化を続ける中国-驚きの12連発
タイで実感する最新アジア-驚きの8連発
第2部 企業実践編-アジアで成功する企業人の知恵
既存のビジネスインフラの活用
日本で一番少額でのアジア進出を追求
ワンストップサービスで日本企業の進出を支援
海外人脈のつくり方、生かし方
日本式サービスを直移転
食品産業の成功のカギは機密保持
21世紀型のアジア企業を追求
リスク情報を顧客に定期便で届けて共存共栄
第3部 特別編-将来を見据えて
日本企業を超える複合的経営
系列のしがらみを越えアジアへ展開
アジアのその次を目指しインドに進出
この本には成功例しか書いてありませんが、「第2部 企業実践編-アジアで成功する企業人の知恵」には、いずれも一筋縄ではいかない成功への軌跡が書かれています。貴重なアドバイスも含まれています。
要は、人まねではなく、自分のアタマで考えつくすということの重要性が強調されています。独自の取り組みでなら、ヒト・モノ・カネに不足するものがあっても道は開ける、と。
面白いのは、「第3部 特別編-将来を見据えて 日本企業を超える複合的経営」で紹介されているタイの会社です。「技術は日本並み、経営はグローバルスタンダード」というコンセプトは、ある意味ではアジアで成功するカギを一言で言い切っているかもしれません。
なんども繰り返しますが、社長が自社の事業に精通している当然だとしても、海外においてその成功法則がそのまま通用するわけではないことです。みな、いずれも手探りで切り開いていったことがわかります。
とはいえ、日本にはすでにないチャンスが転がっているのが、海外、とくにアジアです。ぜひ、アジアで成功をつかんでいただきたいものだと祈念してやみません。
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