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2011年4月12日火曜日

製造業ネットワークにおける 「システミック・リスク」 について

   
 随筆家として有名な寺田寅彦(1878~1935)は、地球物理学を専門とする物理学者でもありました。

 晩年の随筆「天災と国防」(1934年)は、要約する以下のような内容です。

 「天災」は、日本という国にいる以上、避けて通ることはできない。文明が進めば進むほど、自然災害による被害は増大するだけでなく、たとえ一部の損害であっても、すべてがシステムのなかに組み込まれている以上、その被害はシステム全体に拡がる。しかも、国防という観点からみたら、天災が外敵以上に対応が難しいのは、「最後通牒」もなしに、いきなり襲いかかってくるからだ。

 執筆から約80年後の現在でも、そのままそっくり当てはまることではありませんか!

 産業界の話に限定してみても、サプライチェーン問題が、日本のみならず韓国や中国だけでなく北米を含む世界の製造業に大きな影響を与えるに至っています。金融の世界で言われる、いわゆるシステミック・リスクが、製造業の世界でも顕在化したのです。


製造業ネットワークにおける「サプライチェーン」

 サプライチェーンにおける問題は、ビジネスパーソンであれば耳にはしているでしょう。

 サプライチェーン(供給連鎖)とは、複数の企業の間に構築された物流ネットワークのことです。流通業でいえば、仕入れ先から自社物流センター経由で店舗までとなります。すでにできあがっている製品の物流にかんするものです。
 
 製造業の場合は、部品の調達先から組み立てまでが精緻に構築されています。単体部品、ユニット、モジュール、最終組立品と何段階もある製造工程には、きわめてたくさんの企業がかかわってくるので、工程のなかで、どこか一つでも不具合が生じると、システム全体に大きな影響が及んでしまう。

 自動車業界では、Tier 1、Tier 2、Tier 3 という表現があります。自動車車体(ボディ)やパワートレインの組み立て工場に部品を納めるサプライヤーのことを表現した業界用語で、アセンブリーされるモジュールを供給するのがティア・ワン、ティア・ワンにユニットを供給するのがティア・ツー、ティア・ツーに部品を供給するのがティア・スリーとなります。

 サプライチェーンは、部品 ⇒ ユニット ⇒ モジュール ⇒ 最終組立製品 という流れ(フロー)になるわけです。

 今回の激甚災害で東北地方の工場が被災しただけでなく、関東地方の工場も電力不足のために思うように操業できずに、サプライチェーン問題は日本全国の製造業だけでなく、海外の工場にまで拡大しています。


製造業ネットワークにおける「システミック・リスク」

 システミック(systemic)とは、システム全体の、という意味です。金融界においては、市場の一部において発生した破綻などの異常事態により、それが原因で発生した決裁不能が市場全体に波及するリスクのことを意味しています。

 私は、今回の事態は、製造業におけるシステミック・リスクが顕在化したと表現することが、もっとも適切な表現になると思います。

 金融や電力、鉄道などがネットワークによってつながっていることはよく知られていると思いますが、組み立て製造業もまた、部品製造のネットワークによって世界が密接につながっているのです。

 そして、部品製造の分野においては、日本がもっとも重要なプレイヤーであることが顕在化したわけです。部品製造の世界にいれば常識ですが、広く日本のビジネスパーソンがこの事実を知ったことは、怪我の功名(こうみょう)とも言うべきことだったでしょうか。


インターネットの「分散型ネットワーク」は効率性追求の対極の概念

 ところで、今回の地震直後にあらためて確認されたのは、通信ネットワークにおけるインターネット回線の危機対応能力です。もともと米軍が核攻撃に備えて「分散型のネットワーク」を構築したのがその起源ですね。

 日本の製造業ネットワークにおいては、効率優先のあまり集中化を極限まで押し進めた結果、「分散化」という概念が本当に根付くことがなかったのです。「ジャストインタイム」を強調しすぎたがゆえに、効率性は実現したものの、災害時に弱点が顕在化してしまいました。

 対策としては、在庫を積み増す、摺り合わせ型の部品のウェイトを減らして規格品のウェイトを高める、代替部品を探す、一社への集中購買から、かつてのようなセカンドソース確保をかならず行う、などが一般論として考えられるでしょう。もちろんコストアップ要因ではあるが、危機対応費用と考えるしかない。

 ジャストインタイムは環境負荷も大きいので、ある程度の在庫は自社でもつということは、危機対応としてだけでなく重要なことです。これは製造業における「分散型ネットワーク」の実践といっていいでしょう。

 「分散型ネットワーク」といえば、国際展開も考慮に入ります。もし国際展開していれば、どこかの拠点にかならず在庫はもっているはずです。この在庫をどう考えるか?

 今回の激甚災害と原発事故に起因する電力不足によって、さらに製造業の海外流出に拍車がかかってしまうかもしれません。

 海外進出は個別企業のロジックとしては合理的な選択ですが、「日本復興」という観点からは何とも言えないものが・・・。実に悩ましいものがありますね。



<関連サイト>

「天災は忘れた頃にやってくる」で有名な寺田寅彦が書いた随筆 「天災と国防」(1934年)を読んでみる
・・姉妹編の「「アタマの引き出し」は生きるチカラだ!」に書いたものです。リンクなどはこちらを参照




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